不動産投資で法人化すると税制面などでメリットが多く、個人事業よりも運用効率を上げることができます。
しかし、メリットが多い反面デメリットもあるためよく理解しておきましょう。
大きな税制効果!不動産投資を法人化するメリット
所得税率の優遇
個人事業主の場合、"収入が大きくなるほど所得税率が上がる"累進課税となり、税率は5%~45%と大きな幅があります。
特に課税所得が900万円を超えると税率が高く、「900万円超~1,800万以下33%」「1,800万超~4,000万以下40%」「4,000万円超~45%」と定められています。
しかし、法人化することで税率を低く抑えられ、東京都の場合は「実効税率(法人税、地方法人税、法人住民税、法人事業税を合わせた実質的負担率)」は、不動産所得400万円以下の場合は約21.4%、400万円超~800万円以下約23.2%、800万円超~約33.5%と、個人の税率よりも低くなっています。
個人での課税所得が900万円を越えると法人の実効税率のほうが低くなるため、法人化したほうが有利になります。
経費として計上できる
法人化すると、個人の場合よりも経費計上できる範囲が広くなります。
たとえば、家族を社員や役員にして給与や役員報酬、退職金を支払う場合でも経費として計上できるため、大きな節税効果が期待できます。
資金を調達しやすい
個人がお金を借りるには金融機関からの融資が一般的で、厳しい審査を受け、制約も多くなります。
法人の場合は「株式増資」や「社債発行」など、融資以外の方法も選択できます。
また、融資を受ける際も個人よりも信用力が高く、"審査に通りやすい""融資額が大きい""適用金利が低い"などの有利な点があります。
さらに、法人には年齢制限がないため、社長が何歳でも融資を受けられます。
収支状況を管理しやすい
個人事業の場合、個人の収入と賃貸収入の収支を一緒に管理するため、運用効果がわかりにくくなります。
法人化することで個人と法人の収支を切り離して管理でき、投資のパフォーマンスが把握しやすくなります。
不動産を活用した節税効果
個人の所得税は収入が増えると大きくなるので、1人で多額の給与を受け取るより親族に分散したほうが所得税率は低くなります。
不動産収益は所有者に属するため、親族に支払うと贈与税が課せられますが、家族や親族を法人の社員にして給与を支払うことで合法的に分散できます。
また、法人所有の不動産の場合、社長が亡くなっても法人所有は変わらないため、相続税を支払う必要がありません。
損失の繰り越し控除が利用できる
法人で赤字が出た場合、損失を10年まで繰り越せるため、個人の3年と比べて大きな節税効果が期待できます。
不動産投資以外の問題が増える!法人化のデメリット
開業の手間や費用がかかる
法人設立には、資本金や法定費用などの初期費用が必要です。
株式会社で25~30万円、合同会社で10~15万円程度でしょう。
維持管理のランニングコストが必要
法人は従業員への社会保険の加入義務があり、費用の半分は会社負担です。
また、法人化すると会計処理が複雑なので、決算書の作成のために顧問料を払って税理士と顧問契約を結ぶケースもあります。
赤字でも法人住民税が課される
個人は赤字の場合、所得税・住民税がかかりませんが、法人は法人住民税のうち「均等割(資本金や従業員数をもとに決まる)」の支払いが必要です。
青色申告特別控除が使えない
確定申告の際、個人に適用できる65万円の青色申告特別控除が、法人には使えません。
長期譲渡所得の優遇税制が利用できない
個人の場合、所有する不動産を5年以内に売却する税率は39%、5年を超えると20%です。
しかし、法人は期間に関わらず一律に課税され、法人税の最低税率は約22%なので、5年を超えると個人よりも高くなります。